|
|
もともとはテレビのコメディ。目玉ギョロリの変なおじさんMr.ビーンの10年ぶりの映画化。教会のくじ引きでカンヌ旅行が当選したビーンが、イギリス〜カンヌまでの珍道中を描く。主演ローワン・アトキンスン。
ビーンは、自閉的で、社会に適応できそうもない男。しかし、母性本能をくすぐるチャーミングさや純情さが魅力。コトバをほとんど発しない彼からは、サイレント期のコメディアンを連想する。
しかし、「観客を笑わせる」というよりは「観客に笑われる」という芸風で、プリミティブなギャグも多く、観てると、こちらが恥ずかしくなる。ちょうど「寅さん」のベタなギャグシーンを観ているような、居心地の悪さを感じる。これが、ナンセンスの先達であるキートンやマルクス兄弟、完全主義者のチャップリンなどと大きく違う点だと思う。
でも、作品の出来とは別に、個人的にはとても感動したのですね。もう思い入れだけで今回は星5つ。
感動したのはなぜかというと、傷つきやすそうで自閉的なビーンの姿に、自分の姿が重なったからだ。あのダメさはひとごとでない。運転中に眠りかけて、手にかみついたりするシーンを観て、(ああ、自分もあんなことするよなあ)と我が身を振り返って、とても恥ずかしくなってしまった。
また、ドラマ的には、カンヌの海をめざすという展開が、とてもいい。
個人的なことだが、オイラもよく海に行く。泳いだり、プカプカ浮いたりしていると、俗世のモヤモヤが吹っ飛ぶ、至福の瞬間。
海でのスイミングがいいのは、羊水の中に浮かんでいた、胎児のころの記憶が呼びさまされるからかも知れない。仕事などの現代のストレスから逃避するためには最適だ。
考えてみれば、海はすべての生物の故郷。海をめざすのは、アユやサケだけではない。ヨーロッパの人々は、バカンスと称して南地中海を目指し毎年大陸大移動を行う。
海へ還る、というのは、生物的にいっても、極めて当然の行動なのかも知れない。
また、海は母性の象徴でもある。どこか母性本能をくすぐる、永遠の少年であるビーンが、母なる存在である海をめざすのも、しっくりきますね。
ラスト、カンヌの海にたどり着いたビーンのただごとではない至福感を見よ。これを見て、正直、オイオイ泣かされてしまった。はい(恥)。
また、秀逸な場面もいくつかある。
冒頭、ビーンがカンヌ行きの抽選に当選すると、抽選会場を走っていたオモチャの列車が、トンネルに入り、次のカットでビーンの乗ったホンモノの列車(ユーロスター)になって、トンネルから出てくるというシーンがある。
ビーンは少年の心の持ち主。オモチャからホンモノへ。リズムのよい、高揚感にあふれた冒頭。少年のピュアな心を持つビーンの、非日常に旅立つワクワク感を端的に表した、優れたカットと言えるだろう。
サラっと作っているように見えて、うまく企んでいるスタッフにちょっと感心。
|
|